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2023/06/05 2023/06/05

AI時代の幕開け【後編】〜AI時代で価値が高くなる人とは?〜

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AI時代の幕開け【後編】〜AI時代で価値が高くなる人とは?〜

前編では、AIがもたらすインパクトについてお伝えしました。
後編では、AI時代において「価値が高くなる人」の特徴を解説します。

本コラムを最後まで読めばわかるとおり、AIの登場は、あらためて私たちに「人間が持つ本来の強みを活かしなさい」と教えてくれているのです。

【価値が高くなる人①】いろんなことをすぐやってみる人

AIは、大量の情報を処理し、人間に新たな気づきを与えるのは得意ですが、自ら意思を持ったりアクションすることはできません。

情報を提供するのはAIでも、情熱を持って行動に変換するのは人間です。

これはつまり、人間の能力の価値という視点でみれば、今後は情報処理能力よりも、行動力にレバレッジが働くということです。あれこれ考えてチャレンジしない人より、AIを片手に何にでも興味を持ってやってみる人の方が、圧倒的にうまくいきやすくなるでしょう。

ビジネスの基本は、「①成果が出るまであらゆるものを試し、②良い兆候が出たらそこに集中してリソースを投入し、③あとは効率よく回転させる仕組みを導入する」ことですが、生産性の鬼であるAIは②と③で大活躍をしますが、①は人間の特性で差がつきます。

AI時代では、「高学歴・高ステータスだから高収入」のような構図は大きく崩れ、「小学校も途中でやめたけど、いろいろと面白いことをやっていたら、いつの間にか成功していました」といった、これまでの型に当てはまらない成功者がどんどん出てくるでしょう。

好奇心と行動力が、情報処理能力や論理的思考力よりもはるかに価値を持つ時代に入ったのです。

【価値が高くなる人②】身体性を発揮する人

Chat GPTのような大規模言語モデルを使った対話型AIは、どんな質問に対しても違和感なく返答できることが強みです。また、現在、3DCG技術が進化し、リアルとバーチャルの違いがまったくわからないレベルに到達しつつあります。

すでにゲーム内のAIキャラクターと音声で自然に会話する技術まで出てきたところを見ると、この先、「自分が話している相手が人間なのかAIなのかわからない社会」がやってきてもおかしくありません。

また、自分のブログや活動履歴をAIに読み込ませ、思考のクセを学習させて、自分自身をバーチャルヒューマン化する技術も進んでいます。忙しい社長がバーチャル空間で分身の術を使い、年間365日、講演会をしたり、インタビューに答えたりといった日も来るかもしれません。

レア度は希少性で決まりますが、このような世界でレアなのは、むしろ今まで私たちが特別だと感じていなかった「身体性」の方になります。

たとえば、Zoomなどを使ったオンライン遠隔コミュニケーションが当たり前の時代だからこそ、実際に担当者が訪問し、手取り足取りアドバイスしてくれることに、あらためて価値を感じる人も一定数いるでしょう。

逆にいえば、この時代に、生身の身体の移動コストと、生身の人間のコミュニケーション価値を考慮し、「身体を伴う行為」を有料オプション化する企業も増えるでしょう。

また、ビジネスの世界では「泥臭さ」という言葉がありますが、「現場で泥臭く働く人」の価値がこれまで以上に高まると予想します(これは、次の「一次情報に基づいた経験を語れる人」ともリンクします)。

仕事に限らず、格闘技やスポーツやライブなど、汗をともなう人間の真剣勝負や熱狂は、どんどん価値が上がっていくと思います。アウトドアレジャーもさらに人気になるでしょう。

「身体性」を感じられる物事の価値が跳ね上がるのです。

【価値が高くなる人③】一次情報に基づいた経験を語れる人

現代の私たちは、ニュース記事や本やブログ、SNS等から情報収集することがほとんどだと思いますが、これら二次情報は、AIの登場によりさらにコモディティ化します。

その反作用として、一次情報(=現地に足を運び自分の目と耳で得た肌感を伴う情報)がますます価値を持つようになるでしょう。

たとえば、営業でいえば、お客様の元に通い続けていることから、相手が求めていることをすぐにフィットさせることができる人がいたりしますが、これはネット記事の情報などではなく、特定の人との会話やその後の行動など、長年の一次情報の蓄積から、相手の好みや傾向を理解して結びつけているはずです。

そのような人の感覚値は、AI時代になっても、企業側は重視します。現場の生の情報は、AIが打ち出す仮説と、実際に起こる現実とのギャップを埋める役割を果たすからです。

「AIは簡潔にこう言っていますが、現場を何度も見てきた経験から申し上げると、実際にはもっと複雑でこういうケースもありますよ」とか、「どちらかといえば、こういうニュアンスのほうが近いかもしれません」など、自分の肌感覚に基づく「一次情報ベースの経験」を語れる人は、今後も強みを発揮するでしょう。

逆に、現場にまったく出ようとせず、机上で仮説を立てているだけの人は、苦労するかもしれません。それこそAIが最も得意とする分野だからです。

AI時代では、優秀な人ほどAIで完結させず、「現場体験」を買ってでも取りに行こうとするでしょう。

【価値が高くなる人④】人と人との間をつなぐ人

どれだけAIが台頭しても、人間社会が信頼関係で成り立つことに変わりはありません。

こだわりが強い人、気性が激しい人、手短に伝えてほしい人、何度も会ってからでないと心を開かない人。人間は性格も価値観も違いすぎる生き物ですが、この溝を埋めることができるのもまた、AIではなく人間です。

トラブルが起きそうな局面や、相手の説得が難しそうな場面で、自ら率先して前に立つ人がいたら頼もしいと感じるはずです。また、そういう人は自然と周囲からも「あの人ならこの難局も乗り越えてくれるに違いない」と期待されることでしょう。

単純業務はこれからはどんどんAIが担っていきますが、「互いの違いを受け入れた上で、協力関係を築く」「共通の価値観を立ち上げ、複数人を一つの方向に向かわせる」といったことは、これからも人間が担うでしょうし、むしろそれらのスキルの価値が上がっていきます。

AI時代で価値を増す「対人調整力」は、すべての職種に掛け算できる進化スキルです。

たとえば、デザイナーでいえば、これまで部分的なデザイン業務だけ担っていた人が、お客様と打ち合わせし、企画を行い、社内の関係者に方向性を提示し、各所の意見をコミュニケーションしながら調整していく「クリエイティブディレクター」に進化するといった具合です。

【価値が高くなる人⑤】熱意とビジョンを持つ人

AIはサポート役としては最上級に優れていますが、「絶対にこうしたい!」という熱意や、「ここを目指そう!」というビジョンは持ち合わせていません。

移動でいえば、AIは「車」です。徒歩で行くよりも圧倒的に早く目的地に連れて行ってくれますが、目的地(ビジョン)を設定して、ガソリン(熱意)を注入するのは、人間です。

AI時代になっても、経営者や各部門長の方をはじめ、すべてのリーダーに熱意とビジョンが求められることは変わりません。

どんなに性能が優れた車(AI)を持っていても、行くあて(ビジョン)もなく、ガソリン(熱意)も入れずただそこに置いているだけだとしたら、それはただの飾り物です。

ただし、逆も然りです。リーダーが熱意とビジョンを持っていても、「AIをチームに活用するか否か」では、その後、結果に大きな差が生じるでしょう。どんなに情熱的にがんばっても、目的地が決まったあとは、速度において徒歩が車に勝つことは物理的に難しいからです。

【価値が高くなる人⑥】何事も楽しめる人

AIが世界の隅々まで行き渡る過程において、「人間の意味って何だろう?」「生きるってどういうことだろう?」といった哲学的な問いが広がっていくことが予想されます。
(そのため、新興宗教やカリスマや占い師やカウンセラーなど、人々の心の拠り所となるものがさらに流行するかもしれません。)

しかし、どこかで気づきます。「あれこれ難しいこと考えて不安になるより、人生何事も楽しいと思えればそれでいいんじゃないか」と。
生まれてきたことも、死んでいくことも、ただの事実であり、誰も避けることができません。せっかく生きているというボーナスステージにいるんだから、起こることすべてをエンジョイしていこう!と。

今日もごはんがおいしい。夕日が綺麗だ。風が気持ちいい。それだけでラッキーだと感じられるかどうか。

私が人生で最もおいしいと感じたごはんは、長野県の山のふもとの畑で体が動かないほど働いたあとに食べたレトルトカレーです。山小屋で水も少なく体も洗うのが大変な状況から、久しぶりに街におりて銭湯でシャワーの蛇口をひねったときは、お湯がたくさん出るというだけで感動しました。

仕事もプライベートも、大変そうなことや、一見つまらなそうなことだって、何をするにもどうせならやっていて楽しいと思えるようになったほうが得です

AIに楽しいという感情があるかはわかりませんが、「楽しむ」という能力こそ、人間だけに備わっている特権なのかもしれません。

人を楽しませるということを産業にしたエンタメ業界は、今後、ますます盛り上がっていくと予想します。そして、個人で見れば、どんなことも体験価値としてエンタメ化(コンテンツ化)できる人の価値が高くなるでしょう。

おわりに〜AIは人間に本質を問いかけている〜

AIによって、同じ時間でできる仕事の質も量もスピードも格段に上がります。
そんな時代において人間にとって重要なのは、

・好奇心をもって、すぐに行動すること
・身体を動かし、身体性の貴重さに気づくこと
・現場体験を増やし、一次情報を取りに行くこと
・人と人とをつなぐコミュニケーションをすること
・熱意と目標を持つこと
・何事も楽しむこと

という、まるで一周回って帰ってきたような、昔から言われている当たり前の人間らしさです。

もしAIに意思があったら、人類にこうアドバイスするかもしれません。

「人間の皆さんは、ここ数百年、いろんな難しいことを考えてきたと思いますが、その分、あなたたちが持っていた本来の力を忘れてはいませんか?難しいことは私がやりますので、皆さんはどうぞ、あるべき姿に戻ってください」と。

また、AIが普及しても、人に求められる仕事の本質は変わりません。

「AIでも何でも使っていいですよ。でも、あなたはそれでどんな価値を生み出せますか?顧客や社会が困っていることで、あなたは何を解決できますか?」

その問いと向き合う姿勢だけは、どんな時代になっても求められると考えています。

【プロフィール】 (株)ラルズネット代表取締役社長。函館市出身。2006年明治大学卒業。宅建士資格を取得し、野村不動産ソリューションズ(株)入社。不動産仲介(法人営業)に携わる。その後、講師職を経て2010年弊社入社。営業部にて制作事業の売上を3倍にリード。2013年同社GM就任。同年、総売上最高値更新。2014年同社常務取締役就任。営業、商品企画、経営戦略を担当。2020年から現職。好きなものは、将棋、小説、ネコ、温泉、宇宙。 『ラルズマガジン』では、弊社を経営していく中で得た学びを発信しています。学生向けに採用ブログも書いています。

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