相続が発生し、アパートを所有することになった場合、アパートを活用するだけでなく売却するのも一つの手段といえます。
今回は、相続したアパートを売る際に得られるメリット、必要となる費用や注意点について解説します。
相続したアパートを売却するメリットは?
相続したアパートを売却することで、さまざまなメリットが考えられます。
まずは固定資産税の支払いが回避できることです。固定資産税は、各自治体が課税徴収を行っているもので、「固定資産税評価額(課税標準)×1.4パーセント」(1.4パーセントは各市町村の条例で異なる場合もある)を毎年支払わなくてはなりません。
その他にも「固定資産税評価額(課税標準)×0.3(上限)」で計算される都市計画税の支払いも必要となります。これらの税金は年に4回の納期に分けられていますが、一括で支払うことも可能です。
税金の他にも共同部分の清掃や保守点検にかかる建物管理の費用、不動産管理会社を使用しているのであればテナント管理の費用、借入金の金利、減価償却費などが必要となってきます。
特に維持費やテナント管理費については、どの範囲まで業者に委託するのかによってかかる費用が変わってきますが、アパートを優良なテナントにして健全な経営をするためには、ある程度のコストがかかると考えた方が良いでしょう。
相続した物件でアパート経営をする意思が無いのであれば、早く売却するのが得策です。時間が経過すればするほど、その物件の不動産としての価値が低下するからです。
また、自分が亡くなった後の相続のことも考えなくて済みます。これは遺産相続により、家族や親族間で起こりうるトラブルの回避につながります。
他にも売却することで、不動産の登記簿が仮登記のままになっていた場合、知らないうちに不動産の所有の権利を失う可能性を避けることができます。
相続したアパートを売却する時にかかる費用は?
アパートを相続し売却する際には、税金や諸経費などが必要となってきます。
まずは、不動産を売却するときにかわす「不動産譲渡契約書」に必要な印紙税です。印紙税は国税で、印紙を契約書に貼り付けることで納税と見なされます。
売買契約書に記載される金額によって印紙税が決定するので、自分が相続する不動産の価値が高ければ高いほど、印紙税も高くなります。
なお、2018年4月1日から2020年3月31日までに作成される不動産譲渡契約書は、定められている条件を満たすものであれば印紙税の軽減措置が適用されているので、該当しているかどうか確認しましょう。
次に必要なのが譲渡所得税です。これは、譲渡所得に課税される所得税と住民税を指し、物件を売却する際にかかる税金(分離課税)で一番高額になるとされています。
不動産を売却することにより得た利益に対してかかり、課税譲渡所得に対し決まった税率を掛けて算出します。
ちなみに課税譲渡所得は、譲渡収入から譲渡費用、取得費用を差し引いた譲渡所得からさらに特別控除額を差し引いた費用とされています。
相続したアパートを売却する際の注意点について
相続したアパートを売却する際には様々な注意点があります。
売却前に物件を取得するために相続税がかかる
アパートの売却を行うためには、相続の手続きを済ませ、アパートを一度自分の所有物としなければなりません。
その際にかかってくるのが相続税です。敷地と建物の価値は分けて評価され、不動産投資用のアパートに関しては、敷地の資産価値は市場価値よりも3段階、建物は2段階引き下げられて評価されます。
低く評価されることにより相続税が安くなるとされていますが、規模が大きく評価額の高いアパートを相続する場合は、それなりの相続税の支払いが必要となります。あらかじめどれくらいの金額が必要となるか想定し、資金力が必要となることを頭にいれておきましょう。
相続登記をする必要がある
アパートを相続するにあたり、相続登記は必ず必要となるものです。相続登記とは、アパートの登記名義を被相続人から相続人へ変更することをいいます。
この相続登記に関しては、法律上の期限や相続登記をしなかった場合の罰則が決められているわけではありません。
しかし、相続登記をしておかないとトラブルなどが発生した際に、「このアパートは自分のものである」という主張をすることができなくなるので、早めに手続きを済ませたほうが良いでしょう。
相続登記の際には、法務局で登記の申請時にかかる登録免許税が必要になります。計算方法は、固定資産評価額×0.4パーセントです。
他にも土地や建物の全部事項証明書である登記簿謄本代が必要となり、取得費用は1通につき600円です。
また、登記をするために被相続人の戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書などの書類も必要になります。
また、手続きを自分で行わず司法書士に代行をお願いした場合、報酬金額の用意が必要となります。
アパートの所有期間によって課税額が変わる
アパートを売却した際にかかる課税譲渡所得ですが、不動産の所有期間が5年を超えると長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得と判断されます。
売却した年の1月1日の時点での不動産を所得していた期間で決定されます。アパート経営を行っているなどの場合の非居住用であれば、5年以下は39.63パーセント、5年超は20.315パーセントの税率がかけられます。
居住用に使用しているアパートも基本的には同じですが、10年を超えると課税譲渡所得6,000万円以上と以下によって税率が変わってくるので、確認しておきましょう。
共有名義の場合は名義人全員の同意が必要
売却する不動産が共有名義になっている場合も注意が必要です。共有者がいる場合は、自分一人だけでの判断でアパートを売却することはできません。
売買契約の際には必ず共有者全員の署名、実印の押印が必要となります。そのため、共有者全員が売却することに同意をしていなければ、不動産の売却の手続きができなくなります。
共有者が遠方にいる場合など、同意を得ても集まることが難しい場合は、委任者の実印が押してある委任状と印鑑証明書があれば、代理人による売却の手続きが可能となります。
自分に見合ったベストな方法で相続アパートの売却をしよう
一口に相続したアパートの売却といっても、相続人の家庭環境や資金力、不動産の価値によって必要となる経費や労力は違ってきます。相続したアパートの売却における知識をしっかりと身につけ、後悔のないように手続きを進めていきましょう。
また、これらのことで不安を感じたり、疑問が出てきたりした場合は、専門家に問い合わせることも一つの方法です。
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