不動産を所有している人が亡くなって複数の相続人が相続するという段階になると、思いもよらなかったトラブルが発生することがあります。
そうなる前に知っておきたい、不動産の相続でよくあるトラブルをご紹介します。
相続人が多いことで起こるトラブル
民法で定められた相続人のことを法定相続人と呼びます。
被相続人(亡くなった人)に配偶者がいた場合、配偶者はとくに順位がつけられることなく、常に法定相続人となります。
配偶者以外には、第1順位の法定相続人は被相続人の子供、第2順位の法定相続人は親、第3順位の法定相続人は兄弟姉妹となります。
しかし、実際の相続の際には、これらの相続人に養子や非嫡出子が加わることがあります。
最初からわかっているのならそれほど問題ありませんが、ときには生前は明らかでなかった隠し子が現れたり、被相続人の介護をしていた人に遺産を遺すという遺言があって養子縁組もしていたりといったことが起こり得ます。
このように予想外の相続人が増えるとトラブルが起きる傾向があります。
遺産分割の割合によるトラブル
現代の日本では、民法で定められた法定相続に基づいて相続人全員で遺産を分け合う方法が主流です。
しかし実際の分割比率、内容は相続人同士が話し合いで決めるケースが多く、例えば介護にどれだけ関わったかで比率を調整することもあります。相続人が複数いることで、それぞれ主張が違ってくることも当然出てくるのです。
また、被相続人が密かに複数の土地を所有していたなど、思いのほか財産が多いことがわかったときに、相続人の間で分け方について揉めることがあります。
専門家に依頼するほどではないと思っていた比較的小さな資産ほど、後になって相続争いが起きやすくなっているともいわれています。
土地、建物の取り扱いによるトラブル
不動産の場合、そもそも資産をきっちりと分割しづらいという問題もあります。現金であれば、比較的簡単に公平に財産を分けることができます。
しかし建物や土地は物理的に分けるのが困難です。家賃収入が入ってくるアパートなども、相続人同士が納得できるように分けるのは、なかなか難しい面があります。
これを解決するために、「現物分割」、「代償分割」、「換価分割」、「共有」といった分割方法があるので、それぞれ意味を理解しておくことが大切です。
「現物分割」
相続財産を現物のまま分割する方法です。土地の場合は「筆」という単位で土地を法的に分ける「分筆」という手続きを用います。
「代償分割」
不動産を相続した人が他の相続人に代償金を支払うことで公平な解決を目指す方法です。話し合いが必要ですが、この方法はよく利用されます。
「換価分割」
不動産を売却して現金に変えて分割する方法です。
「共有」
不動産を共有名義にする方法です。
共有名義後のトラブル
上記の分割方法の中で「共有」を選択した場合は、さらに別のトラブルが発生する可能性があることにも注意しなければなりません。
例えば共有名義の不動産を売却する場合は、名義人全員の同意が必要になります。あとから売りたいと申し出る相続人が出てくると、意見がぶつかることがよくあります。
また、民法では「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」と規定されています。
不動産を売ること、建物を取り壊すことはもちろん、共有しているアパートやマンションの大規模修繕、建て替え、不動産に地上権や担保権(抵当権)を設定することなども名義人全員の同意を得ることが前提です。
また、自己の共有持分が価値の低い部分だった場合に、不平不満が出ることもあります。共有持分のみを売却することもできますが、不動産の一部だけを売ろうとしてもなかなか買い手が現れないのが現実です。
さらに共有者の1人が死亡すると新たな相続が発生して、共有者がさらに増え、権利関係が複雑化していくことも考えられます。
これらのことから、不動産の相続では共有名義にすることはなるべく避けるのが原則とされています。
不動産の相続にはどのようなトラブルがあるのかを知っておけば、相続が現実になったときに慌てることも少なくなるはずです。
また、トラブルが予想されたり、実際にそうした状態になったりしたときは、なるべく早急に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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