メルカリに出品して学んだこと〜見ず知らずの人との間に成り立つポータルサイト内での「信用」とは何か?〜
今回は、当社のクライアントである不動産会社様に配信しているコラム『ラルズマガジン』に掲載されたインタビュー記事をお届けします。
私がメルカリに出品して気付いたことを元に、「ポータルサイト内における信用とは何か?」というテーマで語っています。
コロナショックによりますますオンライン化が進む今、あらためていろいろと発見があると思うので、ぜひ一度、読んでみてください。
目次
他と比較されたときに、自分(自社)の情報はどのように見えているか?
──メルカリを始めたんですか?
そうなんです。この前の休日に、初めて出品してみました。
メルカリで買い物をしたことは何度かあったんですが、出品は初めてでした。
──どんな物を出品したんですか?
将棋の駒です。将棋好きなんですよ。駒を集めるくらい(笑)
出品したのはお気に入りの駒だったんですが、結局、あまり使っていなかったのと、コロナの影響で外で仕事できなくなってしまい、ちょうど部屋を片付けていたタイミングでもあったので。
それで、出品するにも、最初はやり方が右も左もわからないじゃないですか。
だから、まずは、将棋グッズがたくさん売れている人の出品方法を見て真似をしました。
「駒の情報って、こんなこと書くんだ…」という感じで。作者、書体、材質…など。
──うまくいっている人を真似するのは鉄則ですよね。
ですね。ポータルサイト内で自分が発信する情報って、必ず他の人(会社)が発信している情報の中に混ざるじゃないですか。
ポータルによっては、連合隊の『ラルズアド』のように、情報が埋もれにくくなるオプションもありますが、通常は埋もれますよね。
そこから考えをスタートさせることが大事だと思います。
たとえば、飲料メーカーでいえば、ドリンクのパッケージデザインは単品で考えても仕方なく、むしろ、コンビニの棚に他社のドリンクと並べられたときを想定して作ると思うんですけど、そんなイメージに近いです。
だから最初は、そのポータルサイト内で、とくに売れている商品を掲載していたり、評判が良い人(会社)を徹底的に参考にするのが早いかなと思います。他と比べられた上で、うまくいっているということなので。
「他の情報と並んだときに、自分が発信した情報がどのようにユーザーの目に映るのか?」から逆算して掲載することがポータルサイトの基本ですね。
これは、メルカリだけじゃなく、リクナビであれ何であれ、ポータルサイトに情報を掲載するときは同じことが言えると思います。
私の場合は、一覧ページから研究します。
一覧ページは、「他社の情報がある中での自社の情報」を見るのに、一番わかりやすいですから。
「登録画面のここに入力すると、一覧ページのこの部分にこんな風に反映されるんだ。だったら、この欄にこういう書き方をした方が目立ってトクだな」というような原理原則を、他社の情報を見つつ、まずは把握します。
「写真」の重要さ 〜3秒の勝負に生き残る〜
──やはり写真もこだわったんですか?
写真もがんばりました。
売れている人のを観察していたんですが、やっぱり写真って、めちゃくちゃ大事だなと。
同じ種類の商品でも、写真によって、まったく違うものに見えたりするんです。
将棋駒を見せるにしても、床や紙の上に適当に置かれていたり、背景に冷蔵庫とか家具が写って生活感が出ていたりすると、全然高級感がないというか。
よく売れている人の駒の写真を見ると、紺色の布の上に美しく並べられていて、艶があったりしたので、「これを真似しよう!」と思って。
「艶の出し方は、背景からライトを当てているのかなぁ」とか思いながら、スマホのライトを後ろから当ててみたり(笑)
コツをつかむまでに最初は時間がかかりましたが、慣れたらあとは早くこなすことができるようになりました。
WEB上で反響取るための要素で、写真が占める割合って、ものすごく大きいと思います。
ユーザーの最初のアクションって、まずクリックするかどうかじゃないですか?
クリックされなければ、そのあと、どんなに良い情報を並べていても、ゼロなので。
クリックするかどうかを決めるのに、ユーザーはどんなに長くても3秒と言われていますし、通常は、おそらく一瞬に近いくらいの早さで判断していると思います。
なので、頭でたくさん考えるよりも、まず直感的にビビッとくるかどうか、つまりビジュアルの要素はすごく大きいと思います。
売り手のスタンスをハッキリさせる
──なるほど。他にも工夫したことはありますか?
工夫というか、途中でやめたことはあります。
当初、ボロボロの将棋盤を激安で出品しようかなと思っていたんですが、これをやめました。
というのも、それなりに質の良い駒をがんばっていくつか出品しているうちに、少しずつ閲覧数が伸びたり、同じような人達から「いいね」がつくようになってきて、その流れで、駒が売れ始めたんです。
そのとき、ふと、「ここでボロボロの将棋盤を激安で出品するのって、なんか違う気がする…」って思ったんです。
最近、自分の駒を見に来てくれる人って、きっと、「この出品者は、毎回、必ずそれなりの質の駒を、しっかり写真をとって、きちんと説明してくれる」と思ってくれてるのかも?という気がしたので。
そこに、ボロボロの将棋盤を激安で載せたら、おかしな路線になるんじゃないかと。
最初からそのスタンスなら良いのですが、いきなり毛色が変わると、積み重ねたものの損失の方が大きいのではないか?ということですね。
積み重ねたっていっても、始めたばかりですし、駒が売れたらもう売るものがないんですが(笑)
とにかく、売り手がスタンスを明確にするのって、大事なんじゃないのかなって思ったんです。
リアルでもそうですが、とくにWEB上では。なんとなく、肌感覚ですが。
WEB上では、情報がスカスカなだけで「怪しい人(会社)」という扱いになる
──メルカリって、みんなもっと気軽に出品してると思いますよ(笑)
そうなのかも(笑)
無駄に考えすぎるタイプなので(笑)
あとは、基本的なことですが、すぐプロフィール写真と自己紹介を載せました。
というのも、以前、自分がメルカリで「この商品、いいな」と思って買おうとしたときに、出品者のプロフィール写真がなく、自己紹介も何も書いてない人がいて、「…大丈夫かな?この人…」と一瞬不安になったんですよね。そういえば、商品の写真もコメントもなんだか薄っぺらいなと。
それで買うのをやめたんです。
よく見ると、その「情報が薄い人」が出品している商品は、どれも悪くないのに、全部売れていないんです。
きっと、他のユーザーも「なんだか怪しいな」という印象を持ったのかもしれません。
WEB上だと、情報がスカスカなだけで「怪しい」ということになる。
私たちは無意識的にせよ、そう判断しているんだと思います。
それで今回は、自分が出品者側になるんだから、同じことにはならないようにしようと。
見ず知らずの人との間に成り立つ「信用」とは何か?
──どんな取引でも「信用」が必要ですもんね。
そうなんです。
それが、今回伝えたかったことの核心でもあるんですが、メルカリであれ、他のポータルサイトであれ、WEB上で取引するということは、見ず知らずの人との間でも、大なり小なり「信用」が成立するということじゃないですか。
これって不思議なことですよね。そもそも「信用」って何だろう?と。
もちろん、家族や友人などは、情に強く根ざした信用だと思いますが、仕事や取引で、さらに一度も会ったことのない人との「信用」というものがあるとしたら、それは何なのか?
──そう言われるとたしかに。「信用」って何なんですかね?相手が単に「いい人そう」だったら信用があるかと言われれば、それは違うでしょうし。「きちんとしている人」とか?
先ほど、「この人からは買う気がしない」という、情報がスカスカで怪しげな出品者の話をしましたが、逆に、よく売れている人って、商品写真やコメントや自己紹介から、こだわりが滲み出てるんですよ。
「30年前の将棋駒を、イボタロウと瀬戸玉を使って、プラスチックと見間違えるくらい自分でピカピカに磨き上げました!」とか言って、磨いた道具まで載せてたりするんです。
そんな道具の名前なんて、聞いたところでもちろんわからないわけですが、それでも「この人、将棋が好きでたまらないんだろうなぁ」ということが、商品を掲載するその姿勢から、見ているユーザーにすぐに伝わってきます。
そういう出品者は、やっぱり気になるんですよね。「この人、次はどんな物を出品するんだろう?」ってワクワクするので、ついフォロー(=お気に入り登録)してしまいます。
やっぱり、こだわりがない人より、こだわりが強い人から買いたくなるんです。
「信用とは何か?」
これは、何通りも解釈はあると思うのですが、個人的に定義を考えてみた結果、
「この人(この会社)なら、こういうときに、高い確率で、こういうアウトプット(質・判断・行動・サービス提供)を出すだろう。そして、それは大方、私が望まない結果にはならないだろう」と、“相手から認識されている”状態
なのかなと思いました。
つまり、「この人(この会社)のやることなら、悪いことにはならないだろう」と。
「何を売っているか?」以上に「どんな考え方の人が売っているか?」で差がつく時代
──悪いことになりそうな相手とは取引できないですもんね。
そうですよね。ちなみに「信用」という概念は、自分と未知のものとをつなぐときに生じます。
つまり、人は「信用」という架け橋を使って、未知の領域に歩を進めるということです。
この架け橋の姿は、事前に相手に見えていなければいけません。
橋があるかどうかわからなければ、誰も向こう側に渡ろうとしませんし、明らかにボロボロの橋は怖くて誰も渡りません。
そのへんの道ですれ違った人から突然、「あなたの家、私が高く売りますよ?」と言われても、ほとんどの人は相手にしないでしょうし、仲介業者が売却依頼を得ようとするときに、チラシに自社の売却実績をたくさん載せるのは、「当社の橋はしっかりしていますよ。安心して向こう側に渡れますよ」と事前に相手に認識させるためです。
──「どんな橋なのか、事前に相手に見えていなければいけない。そうでなければ、怖くて誰も渡ろうと思わない」。…これは、考えさせられますね。
未知とはリスクでもありますが、それをつなぐ架け橋の情報が鮮明でなければ、相手もリスクを取るメリットがないんです。
だからこそ、地道なところでいうと、自分(自社)の写真だったり、自己紹介(会社紹介)だったりといった最低限の要素はもちろん、その人(会社)がどんな考え方をするのかも定期的に発信したほうが良いと思います。
とくに、今は、商品自体には、質や機能に大きく差が出ない時代です。
川で洗濯していた時代に、洗濯機が発売されたならそれは飛ぶように売れますが、現代ではどの洗濯機も素晴らしく汚れが落ちるし、どの炊飯器もお米がしっかりと炊けます。汚れが落ちない洗濯機を見つける方が難しいくらいです。
だからこそ、「誰が売っているか?」、もっと具体的に言うと、「どんな考え方の人(会社)が売っているか?」が最大の差別化ポイントになると思います。
「信用」は細部に表れる 〜現代のユーザーの嗅覚の鋭さ〜
──たしかに、考え方をきちんと発信している人と、何を考えているのかまったくわからない人だったら、考え方が見えていて、共感できる人から買いたくなりますね。
そうですよね。この点については、「発信しなければ伝わらない」という当たり前の原則が意外と盲点で、人は自分で考えているだけで、「自分(自社)は前からこんな感じだし、相手もわかってくれているだろう」と無意識にせよ思い込んでしまっているケースがあるんです。
伝えるということは、誰でもわかる言葉で、様々なチャネルを使って、定期的に何度も発信しなければ相手には伝わらないし、それを全部やっても5割くらいしか伝わっていないかもしれないくらいの気持ちでいる必要があります。
また、「信用」は細部に表れます。
日々、すごい数を比較検討している今のユーザーは、掲載する商品の写真やコメントの質から、「この人(会社)は、こういうスタンスなんだ」と瞬時に読み取る嗅覚が相当鋭くなっています。
ここは大事な点で、つまり、出品者側が見ず知らずの人にWEB上で信用を得るには、「この人(会社)のこだわりや気配りはすごいな」と、登録の内容から感じ取ってもらえなければいけないということです。
逆に、自分(自社)の写真も自己紹介もなく、商品の写真やコメントから何一つこだわりを感じることができなければ、他のユーザーからは「この人(会社)、大丈夫かな…。関わらない方が無難だな」と思われてしまうということです。
──やはり、何事も質の高さが信用につながるということでしょうか。
うーん、それでいえば、何をもって質が高いかもいろいろあると思っていて、たとえば、単純な例で言うと「必ず、毎週火曜日にブログが更新される」とかも一つの信用につながると思いますよ。
相手から、「この人(会社)は、こういうとき、必ずこういう考え方をして、こういうアクションを起こすよね」と認識されていくことになるので。
──なるほど。そろそろ時間ですね。最後に一言あればお願いします。
今回は、メルカリで出品してみて、うまくいくコツなんかを考えているうちに、「そういえば、ウチもポータルサイト会社だった!」と思い、もしかしたら似たようなことが当てはまるんじゃないのかなと思って、覚えているうちにいろいろ話してみました。
うまくいっている人や企業のパターンと、そうでないパターンがある以上、「オンラインで見ず知らずの人と信用を築く方法」というのが、確実にあると思います。
それはどのようなものなのか?そもそも「信用」とは何なのか?
この考察は、Eコマースが出てきた当初も議論されましたが、コロナショックによりますますオンライン社会になっている今だからこそ、あらためて重要であり、興味深いテーマだと思いました。
──今回はありがとうございました。
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