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入居者が無断転貸していた場合にとるべき対応

不動産投資や不動産賃貸は、不動産を所有しているだけで家賃収入が入るお得な収入源であると考える人もいます。

しかし、さまざまなトラブルに見舞われるかもしれないことを覚悟しなければいけません。

そのひとつが入居者による無断転貸の問題です。

もし入居者の無断転貸に遭遇した際にはどうすればよいのか、その対策や予防について紹介します。

無断転貸とは何か?

無断転貸とは何か?

自らが所有しているアパートやマンション、戸建て家屋といった建築物などの不動産を、自らが貸主となり、不動産を賃貸して、賃貸料金を得ることを不動産賃貸業と言います。

これは、貸主と借主の間で結ばれる賃貸借契約によってなされているものです。

転貸とは、他人から借り受けた何らかのものを、さらに別の誰か(第三者)へと貸してしまうことで、いわゆる又貸しのことです。

転貸行為自体は、違法性のある行為ではありませんが、元の貸主に対して断わりなく、無断で転貸行為を行った場合、無断転貸ということとなり、場合によって違法行為に該当してしまいます。

無断転貸は、不動産賃貸業の際だけに使われる用語ではありません、不動産賃貸業を行う上で、問題となる行為であり、これを規制するための制度もしっかりとあります。

不動産賃貸業や不動産投資を行う場合は、無断転貸に関する知識をあらかじめ身に着けておくことが必要です。

無断転貸の問題点

無断転貸が行われていたとしても、賃貸料が正しく入ってくるのならば問題がないのではないか、と考える貸主もいます。

確かに、不動産賃貸業を行う上で重要となることは、正しく賃貸料が入ってくるかどうかという点です。

賃貸料を滞納する入居者に貸すぐらいならば、無断転貸していても賃貸料を支払ってくれる人と契約した方が良いと感じるかもしれませんが、必ずしもそうとは言えません。

無断転貸を黙認していたり、放置してしまうと、さまざまな問題が生じる可能性が高いです。

無断転貸の最も大きな問題は、無断転貸によって入居する人が何らかの理由によって契約者になりえない人であるからです。

賃貸料金を払う資産は有しているが、契約者の属性に問題があると審査から外されてしまうため、無断転貸を利用します。

無断転貸を活用する人の多くは、不法滞在の外国人であったり、反社会勢力に属しているもの、風俗関係に勤務している人に該当しています。

これらの人々が入居していると、場合によっては賃貸物件内の風紀が乱れたり、近隣住民とのトラブルを起こす可能性があります。

無断転貸を放置するということは、何らかのトラブルの種を持ち続けている状態であるということを認識しなければなりません。

無断転貸されていたならば契約解除?

無断転貸が行われているとわかったならば、何らかの対応をしなければなりません。

賃貸借契約をどのように行うべきかに関しては、民法によって細かく定められており、無断転貸や無断譲渡については民法第612条で対応することが可能です。

民法第612条では、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲渡し、又は賃借物を転貸することができない(1項)」、「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる(2項)」となっています。

つまり、1項において賃貸人に無断で建物を賃貸すること(無断転貸)は禁止されており、2項において無断転貸や無断譲渡をした賃借人との賃貸借契約は解除することができるというわけです。

このふたつの条約によって、契約書で無断転貸を禁止していなかった場合でも、無断転貸をすることは違法行為に該当することとなり、契約解除をして退去を求めることができます。

また、転貸されている物件の家賃が滞納している場合は、無断転貸によって入居している人にその滞納家賃の支払いを求めることも可能です。

契約解除の際の注意点とは?

無断転貸をされていることが発覚したならば、民法第612条によって契約解除をして、退去をすることを求めることが可能です。

しかし、どのような場合であっても、契約を解除することができるというわけではありません。

賃貸借契約は、当事者間の信頼関係を土台として成り立っている継続的な契約です。

そのため、当事者間の信頼関係が損なわれて初めて解除を認めるという判例理論(信頼関係破壊の法理)があり、賃貸人の背信行為であると認めるに足らない事情の時は、契約解除をすることはできません。

具体的には、父親が契約者であったが死別してしまい、残された家族が賃貸借を続けたい場合や借主から事前・事後に転貸・譲渡に関する申し出があり承諾した場合、そして店舗契約が個人事業主から法人化して、形式的な使用者が変わっているが経営実態には変化がない場合などが該当します。

事業用の物件で、この事情が認められることは稀です。

もし、無断転貸を知りつつ黙認してしまうと、貸主からの黙示の承諾があったとみなされてしまいます。

すると、問題が起きた場合も、契約解除がなかなか進まずに問題が大きくなってしまう可能性もあるので黙認はしてはいけません。

無断転貸の問題が発覚したら

無断転貸の問題が発覚したら

もし無断転貸の問題が発覚したならば、貸主・不動産のオーナーは速やかに弁護士に相談することが勧められます。むしろ、発覚してからではなく、無断転貸が疑われる段階で相談するべきでしょう。

無断転貸の実態を明確にすることも含め、無断転貸が分かり契約の解除を進めるにしても、転貸状態を解消させることだけを目的にするにしても、専門家の対応を求めることが必要です。

借主も無断転貸の事実を否定することからはじまり、信頼関係破壊の法理でもって対抗してくるため、専門家による戦略的な対応が必要になるからです。

しかし、専門家に任せるから問題ないと考えて遅い対応をしてしまうと、黙示の承認が認められてしまう可能性があるので、すばやい対応をしなければなりません。

無断転貸を予防するために

無断転貸をされてしまうとさまざまな問題が起こる可能性があります。

されてしまった後に対応することも重要ですが、予防を心がけることも重要です。

まず、賃貸借契約書に無断転貸や無断譲渡を禁止する旨をしっかりと盛り込み、貸す前に周知することが第一です。

転貸を考えている場合は、事前に通知することを義務付けるとともに、違反行為があった場合は契約解除をする旨を契約書に書いておけば、無断転載も起こりにくく、かつ解決の手助けにもなります。

そもそも、怪しい人に貸し出さないということも方法のひとつです。

入居審査の段階で、申込書や提出書類、勤め先などや賃料を判断して、情報の整合性がとれないようならば、入居を断ることも必要となります。

無断転貸を防ぐには

不動産賃貸業を行っていると、無断転貸の問題に突き当たることがあります。

家賃収入が入っていたとしても、近隣住民とのトラブルになりかねませんので、素早い対応が必要となります。

無断転貸が発覚すれば、民法第612条をもとに、契約解除をすることが可能ですが、これらの対応は弁護士などの専門家を頼ることがおすすめです。

また、そもそも無断転貸が起こらないように契約書をしっかりと制作、予防することにも力を入れるべきでしょう。

放置すればするだけ対応が難しくなるので、すばやく、かつ専門的な対応をすることが勧められます。

この記事を書いた人:株式会社ラルズネット 編集部