不動産投資では、財務上の利益が出ているのに倒産してしまうということがしばしば起こります。
財務上は黒字なのに倒産してしまうという逆転現象にならないために、黒字倒産の原因と倒産を避けるための不動産投資の注意点を紹介します。
黒字倒産とは
黒字倒産とは、税金を計算する財務上は利益が出ていて黒字であるにもかかわらず、資金繰りが悪化、キャッシュが不足し支払いが滞り破綻することを言います。
不動産投資における黒字倒産の多くは、入居率は悪くなく、家賃収入がしっかりあります。
家賃収入がきちんとあって収入面では当初の計画通りであるにもかかわらず、倒産に陥るリスクがあるというと怖いと感じるかもしれませんが、黒字倒産に陥る原因を検証し、対策を講じることで黒字倒産を回避することができます。
黒字倒産に陥る原因
物件購入直後は、不動産取得税や保険料、管理会社への委託手数料など経費計上できるものが多く、この経費が大きな節税効果を生みます。
入居率が高く家賃収入があれば、多くの場合現金が残ります。
経費に計上できるものはいくつかありますが、その中の減価償却が大きなポイントになります。
減価償却とは、会計上の考え方で、建物や建物設備は一度に経費計上するのではなく、「相応の期間」で分割して長期にわたって経費に計上していくことを言います。
実際の支出は無いのに経費として計上できるのが減価償却です。この「相応の期間」は法定耐用年数と言われ、建物によって耐用年数が決められています。
例えば、木造建築の場合、耐用年数は22年と決められていて、22年間は建物の取得価額に償却率を乗じたものを減価償却として経費計上できます。
鉄骨構造の建物の耐用年数は34年、鉄筋コンクリートは47年というふうに耐用年数は決まっています。
また、不動産取得のローンの利息分は経費として計上できますが、元金返済額は経費として計上できないということも大きなポイントとなります。
ローンの元金返済額よりもこの減価償却額の方が大きければ、財務上、実際の支出の無い減価償却が経費として計上できるので、実際の支出であるローンの元金返済額があったとしても、節税効果が期待できます。
しかし、この耐用年数を経過するとそれ以降は減価償却が経費として計上できなくなってしまい、実際のローンの元金返済額は大きいのに経費計上ができないので、節税効果が無くなってしまいます。
この、減価償却費よりもローンの元金返済額が大きくなってしまうことはデッドクロスと呼ばれ、経費計上できないのに支出が増えて、手元のキャッシュがどんどん減っていき、やがては倒産に追い込まれてしまいます。黒字倒産に陥らないために
黒字倒産に陥らないようにするには、デッドクロスにならないことです。
デッドクロスになるポイントは耐用年数が切れるタイミングと言えます。不動産取得時にはこの耐用年数をよく確認することが必要です。特に、中古物件を購入するときには注意が必要と言われています。
中古物件取得時の耐用年数は、物件新築時の耐用年数から経過年数の8割分を引いたものが中古物件の耐用年数として適用されます。
既に新築の物件よりも短くなってしまっている上に、中古物件の中には耐用年数が短くて減価償却できる期間がとても短いものがあるからです。
不動産購入時は、減価償却できる期間が長いもの、つまり耐用年数ができるだけ長いものを購入することが重要です。
また、購入した不動産はデッドクロスになる前に売却を検討することも必要です。
デッドクロス回避手段
デッドクロスになりそうな場合やデッドクロスになってしまった場合には、その対処法が3つあります。
ローンの借換えによる対処法
ローンの借換えをして返済期間を長くする方法です。
返済期間を長くすることで、返済の総額は大きくなってしまう可能性がありますが、毎年の返済金額自体を軽減させることができます。
繰り上げ返済による対処法
預貯金に余裕がある場合には、繰り上げ返済をして月々に支払うローンの返済金額を少なくします。
新しく不動産を購入する対処法
新しく不動産を購入する、または買い換える方法です。
新しく不動産を購入することで新規取得物件の減価償却を使うことができます。
減価償却の耐用年数が短くなってしまった物件を売却すれば、減価償却できる期間が長い物件だけが残るので、デッドクロスには陥りません。
買い替えができる確実性は無い方法ですが、買い替えをすることができればデッドクロスを回避できます。
不動産投資を成功させるために
ローン返済額や減価償却は事前にシミュレーションすることができます。
シミュレーションによってデッドクロスが何年後に来るかも大体予想ができるので、不動産投資をするときには目先のことだけではなく、何年も先のことを見越してから投資を始める必要があります。ローンの元金返済額は、税金を計算するときには経費として計上できないことや、利息がかかることからも、不動産取得時にはできるだけ多くの自己資金を投入することも大切です。
自己資金を投入することとシミュレーションを入念に行うことで、デッドクロスに陥らないようにしましょう。
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