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不動産売買における中間省略登記のメリット・デメリット

不動産売買において行われる「中間省略登記」は、税金対策になるなどのメリットがある一方、デメリットも存在します。

ここでは、中間省略登記とは何なのかを含め、その契約方法、メリットやデメリットについてご説明していきます。

中間省略登記ってなに?

不動産売買における中間省略登記のメリット・デメリット

中間省略登記とは不動産登記において複数人で売買を行い、所有権が変わっているにもかかわらず中間者の移転登記を省略し、最終的に所有権を得た方に直接所有権が移ったこととして提出する仕組みのことを指しています。

この中間省略登記には、旧中間省略登記と平成17年3月に施行された改正後の中間省略登記があります。

不動産売買を行う上で、AからB、BからCへの転売が実施された際に、所有権はAからB、BからCに移っていますが、中間者であるBへの移転登記を省略し、AからCへ直接所有権が移ったと記録してしまう登記のことを中間省略登記と言います。

法改正される前の平成17年3月以前の旧中間省略登記では、登記を申請する際には、登記原因を証する書面」(売買契約書等の原因証書)の添付は必須ではなく、「申請書副本」(登記申請書の写し)を提出すれば良いという決まりとなっていました。

この申請書副本は、不動産売買の際に中間者であったBの存在を記載せず、登記義務者であるAと登記権利者であるCのみが記載されている書類のことです。このようにすることで、実際にはAからBを経てCに権利が移っていたとしても、AからCへ直接売買が行われたと判断され、中間省略登記の申請が受け付けられていました。

しかし、平成17年3月7日に、新不動産登記法が施行され、「権利変動の原因を証する情報(登記原因証明情報)」を提出することが義務付けされました。

これを添付することで、売買により所有権が移転した際のあらゆる情報が正確に明記されるため、中間者の存在も隠すことができなくなったのです。

もともと旧中間省略登記の際にも、登記事務を取り扱う法務局では中間省略登記の考え方を認めていなかったのですが、実際には中間者の存在を隠したままで申請を行うことができていたということになります。

これが、法改正により中間者の存在を隠すことができなくなったのです。

中間省略登記の契約手法について知ろう

法改正後の中間省略登記での契約方法には2つの方法があります。

1つ目は第三者のためにする契約の直接移転売買方式です。これは、A・B・Cという3人がいた際に、AがBに物件を売り渡し、BがCにAとの契約で得た契約上の地位の譲渡を行うことをいいます。

これにより、Bは所有権を取得せず、AからCに直接所有権の移転登記を行うことが可能になるのです。

そのため、Bは登録免許税・不動産取得税を負担する必要がなくなります。この第三者のためにする契約の直接移転売買方式を行う際に必要な書類は、本契約方式による旨の登記原因証明情報・Aの登記済権利証・Aの印鑑証明書・Cの住民票・取引建物の固定資産評価証明書となり、比較的少ない書類のみで済みます。

2つ目は、買主の地位の譲渡です。

これは、AとBで売買契約を結び、BからCに売買契約の買主たる地位の譲渡契約をします。

その後、この譲渡についてAの同意を得、CがAに代金を支払うことで、所有権がAからCに直接移転することになるのです。

この流れを登記原因証明情報に記載することでAからCに所有権を渡すという方法のことを指しています。

第三者のためにする契約の直接移転売買方式と同様に、Bが登録免許税・不動産取得税を負担する必要はありませんが、売買契約が2つになり、必要書類もAB間で売買契約を行う際にAB間の売買契約書・Aの印鑑証明書・AからBへ受益の意思表示受領委任状が必要になるほか、BC間の売買契約書、所有者を移転させる時にはBの印鑑証明書・BからAへ所有権移転先指定通知書、Cの印鑑証明書やCからAの代理人Bへ交付する所有権取得意思確認書などが必要です。

また、決済当日にはA・Bの印鑑証明書・Cの住民票・Aの権利証・登記原因証明書情報といったように複数の書類が必要になってしまうのです。

中間省略登記のメリットとは?

中間省略登記のメリットとは?

登録免許税が1回で済む

移転登記をすることで登録免許税という税金がかかります。本来、移転登記としてAからB、BからCという登録をする場合には、登録免許税が登記2回分必要になりますが、中間省略登記では、中間者Bに登録免許税がかからなくて済みます。

節税が期待できる

中間者Bには登録免許税がかかりませんが、同様に不動産取得税も免除されます。このことによりBだけにメリットがあるのではなく、流通コストも抑えることができるため、Cの買取価格も低下させることが可能になるのです。

売買代金が知られないで済む

買主の地位の譲渡を行う場合に限られますが契約書類をAB間で個別に作成しているため、CにAB間での売買価格を知られることがないのです。自分がどのくらいの差益を得ているかを知られたくない場合に便利です。

中間省略登記のデメリットとは?

登記名義が残る

中間省略登記では、AB間での売買が終わった後も登記名義はAのまま残ります。そのため、Aが第三者であるDなどに売却を行い、先に所有権移転登記を経由した場合、Bは対抗することができなくなってしまうのです。

なお、このようなリスクを避けるため、根抵当権設定仮登記をBの名義で行うこともあります。

正しい取引経過が登記に反映されない

実際にはAからB、BからCというような取引の流れがあったとしても、中間省略登記ではAからCに所有権が移転されたという記録になるため、正しい取引経過が登記に反映されません。

名義人が所有者ではない場合が出てきて不動産取引を不安定にさせてしまうデメリットがあります。

よく考えて中間省略登記を行おう

中間省略登記については、「第三者のためにする契約の直接移転売買方式」と「買主の地位の譲渡」の2つの方法での不動産取引は正式な取引方法として認められています。

それぞれ、必要な書類や手順が異なります。

中間省略登記と行うことで、節税対策をはじめとした様々なメリットがありますが、どちらの方法をとって行うべきかをよく考えてから三者間での取引を行うようにしましょう。
この記事を書いた人:株式会社ラルズネット 編集部