賃貸物件を購入するというのは、不動産オーナーであれば珍しいことではありません。
ただ、その場合に敷金や滞納家賃はどうすべきか、詳しく知らないというオーナーも多いでしょう。そこで今回は、オーナーチェンジによる敷金の承継に関する詳細を解説していきます。
賃貸物件で多く見られる敷金とは
敷金は、物件を契約する際に貸借人からオーナーへと預託する現金のことです。家賃滞納が発生したり、物件に損耗があったりした場合などに敷金から家賃や補修費用を充当することになります。このため、家賃の滞納もなく、補修の必要もないほど綺麗に物件を使っていた場合、基本的には全額が貸借人に返金されます。
ただし、賃貸契約書に敷金償却が明記されていた場合は返金する必要はありません。貸借人が退去した後のクリーニング費用や畳などの張替え費用なども敷金から充当するケースが一般的で、実際には全額返金することは少ないでしょう。
敷金の相場については平成19年に国土交通省が調査を行っており、関東から東は家賃の0.8ヶ月から2ヶ月分、富山県や愛知県周辺の地域では2ヶ月分、関西から西は3ヶ月分と地域によって微妙な違いがあります。
いずれも貸借人の退去時に支払わなければならないお金なので、準備が必要です。
敷金とは別に保証金というものもあるのですが、これは関西以西でよく使われる項目で、基本的な用途は敷金とほぼ同じです。
ただし、保証金の場合は敷金だけでなく礼金も含まれているケースが多く、金額も大きくなりがちです。
また、「敷引き特約」といってあらかじめ退去時に返金しない金額を定めることもできます。関西以西の物件を購入するオーナーは、敷金と保証金の違いを知っておきましょう。
オーナーチェンジで物件を購入した場合の敷金
本来敷金は貸借人の退去時に返金すべきお金なので、オーナーチェンジした場合も新しいオーナーに返還義務が承継されます。
つまり、貸借人が退去するなら新オーナーが残りの敷金を返還することになるため、旧オーナーが預かっている敷金も物件の売買と同時に新しいオーナーに移転させなければなりません。
以前のオーナーに預託されていた敷金は、貸借人に債務があればそれに充当され、残った敷金が新しいオーナーへ承継されます。滞納家賃があった場合は本来なら敷金から充当されるのですが、旧オーナーが持つ滞納家賃債権は基本的に新オーナーには承継されません。
仮に承継するのであれば、債権譲渡手続きが別途必要になります。これは、旧オーナーと貸借人との間で一度賃貸借契約が終了するためで、貸借人の債務があるなら担保である敷金で清算しなければならないためです。
清算後の敷金が新オーナーに承継されるのは、敷金が担保として重要な役割を担うものであることから、オーナーという地位の移転と同時に担保も移転してしかるべきだからです。
敷金移転で起こりがちなトラブル
承継に伴って敷金を旧オーナーから新オーナーに移転する場合、当然ですが現金が必要になります。
ところが、旧オーナーが管理委託会社を利用していた場合、自分で敷金を保管しておらずトラブルになってしまうケースもあります。オーナーが変わった後も以前の管理委託会社を利用するならそのままでも良いのですが、新オーナーが自分で管理したり、これまでとは別の管理会社に委託したりする場合はそうもいきません。
必要となる敷金を以前の管理会社から受け取らなければならないため、早急に新旧の管理会社と連絡を取って具体的な手続きを進めるようにしましょう。
敷金承継で損をしない方法
敷金の承継のことを知らずに売買契約を結んでしまうと、旧オーナーから敷金を受け取らないまま敷金返還義務だけを負うこともあり得ます。こうなると自分の資産から退去時に返還する敷金を捻出しなければならず、大きな損をする可能性もあるでしょう。
また、敷金の中には返還する必要のない保証金や敷金償却特約などもあるので、契約内容を正しく理解しておくことが重要です。
そのためにも、物件を購入する際には契約書の内容を詳しくチェックし、敷金の承継や返還義務について確認することが欠かせません。
また、新オーナーの権利義務を明確にするためにも、賃貸人の地位承継通知書及び同意書を必ず取り交わすようにしましょう。通知書には、オーナーの変更だけでなく、債権や債務が発生しているならその内容についても明確に記載してください。
これにより、オーナーだけでなく貸借人からも承継について同意を得たことの証拠になります。
オーナーチェンジによる承継は注意点が多い
賃貸物件を購入する際は、敷金に代表される権利義務の承継の注意点がいくつもあります。
そもそも敷金とは何なのか、オーナーチェンジで物件を購入した場合はどんな取り扱いになるのかなど、事前に知っておかなければならない基本的な情報もあります。そのうえで、敷金の承継で起こりがちなトラブルや損をしない方法などを知り、利益を得るためにしっかり対策することが大切です。
購入前に正しい知識を得て準備を行っておけば、敷金の承継は難しいものではありません。不安な場合は弁護士や不動産コンサルタントなどに相談し、物件購入に問題ないか確認しておきましょう
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